漢方治療エビデンスレポート
日本東洋医学会EBM委員会エビデンスレポート/診療ガイドライン タスクフォース
5.
精神・行動障害
文献
Terasawa K, Shimada Y, Kita T, et al. Choto-san in the treatment of vascular dementia: A double blind, placebo-controlled study. Phytomedicine 1997; 4: 15-22.
寺澤捷年. 脳血管性認知症に対する釣藤散の効果. Pharma Medica 2007; 25: 57-9.医中誌
Web ID: 2008035997 MOL, MOL-Lib
1. 目的
脳血管性痴呆に対する釣藤散の効果を、より客観的な基準を用いて評価 2. 研究デザイン
二重盲検ランダム化比較試験 (DB-RCT)
3. セッティング
富山医科薬科大学、鹿児島大学、東北大学他、9つの一般病院による多施設共同研究
4. 参加者
DSM-III-Rによる痴呆の診断基準に合致し、かつCarlo Loeb修正虚血点数5点以上で脳
血管性痴呆と診断され、全身状態が安定し、本人または家族の同意が得られた139名 (男
50名、女89名、平均年齢 76.6歳) 5. 介入
Arm 1: ツムラ釣藤散エキス顆粒を1回2.5g、1日3回、毎食後に投与し、12週間継続。
69名 (男28名、女41名)
Arm 2: プラセボはラクトース、デキストリン、マルトース、セルロースなどの成分か
ら成り、事前に色調や味などを試験し、釣藤散と識別できない製剤をツムラ社
が作成。介入群と同量、同回数投与。70名 (男22名、女48名)
6. 主なアウトカム評価項目
4週毎に自覚症状、神経症候、精神症候、日常生活動作障害の重症度および改善度、長
谷川式簡易知能評価スケール (HDS-R) 。12週後に全般安全度、有用度を評価
7. 主な結果
全般改善度 (8週P<0.01, 12週P<0.001) 、有用度 (12週P<0.001) 、自覚症状 (8週P<0.05,
12週P<0.01) 、精神症候 (4週P<0.05, 8週P<0.001, 12週P<0.001) 、日常生活動作 (12
週P<0.05) において、釣藤散群がプラセボ群より有意に改善した。神経症候については
両群間に有意差を認めなかった。それぞれの症状では「会話の自発」「表情の乏しさ」
「計算力の低下」「知力全般」「夜間せん妄」「睡眠障害」「幻覚もしくは妄想」に対し
て釣藤散群がプラセボ群よりも有意に改善した。HDS-Rは釣藤散群で高得点の傾向が
みられたが、両群間の比較では有意差を認めなかった。 8. 結論
これらの結果は、釣藤散が脳血管性痴呆の治療として有効であることを示唆している。
9. 漢方的考察
釣藤散は中年期以降の体力が弱く、頭痛・頭重感・回転性めまい・顔面紅潮・不眠・
耳鳴等の症状をもつ患者に使用されてきたが、これらの症状は脳血管障害に相当する
ものと考えられ、本試験により脳血管性痴呆に対する釣藤散の臨床効果が客観的に評
価された。
10. 論文中の安全性評価
釣藤散投与群で5名 (発疹、下痢、食欲低下、胸焼け、高血圧) を認めたが、全般安全
度においては両群間で差はなかった。 11. Abstractorのコメント
前調査 (Shimada Y, Terasawa K, Yamamoto T, et al. A well-controlled study of Choto-san and
placebo in the treatment of vascular dementia. 和漢医薬学雑誌 1994; 11: 246-55.) を発展さ
せ、より大規模な設定で釣藤散の脳血管性痴呆に対する効果を評価した RCT。よくデ
ザインされており、得られたエビデンスの質は高い。前調査とおおかた同様の結果と
なっているが、改善した症状が若干異なり、前調査の結果も参照されたい。将来的に
は現代医学のゴールド・スタンダードとの比較もみてみたい。寺澤 (2007) はTerasawa ,
et al (1997) の日本語ダイジェスト版である。 12. Abstractor and date
鶴岡浩樹 2009.4.22, 2013.12.31